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塩野義製薬に転職したい人のための企業分析

塩野義製薬に転職したい人のための企業分析
※この記事は2023年3月期決算の情報に基づきます。
コロナ治療薬の開発や抗インフルエンザ、HIV薬など感染症に強みを持つ塩野義製薬。本記事では塩野義製薬の「成長性」「強みを持つ領域・モダリティ」「将来性」の3つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていきます。

(1)塩野義製薬の成長性

塩野義製薬の売上高、営業利益の5年間推移

塩野義製薬の5年間(2018~2022年度)の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度は塩野義製薬の決算情報(2023年3月期)で報告された業績予想である。
塩野義製薬の売上高、営業利益の5年間推移
塩野義製薬の売上高、営業利益の5年間推移
※23年度は予想

2018年度から2020年度までは売上高と営業利益が減少したが、2020年度から2022年度は売上高が増加している。2019年度、2020年度は新型コロナウイルスが流行したことでマスクの着用や手洗いうがいが徹底され、インフルエンザなど市中感染症の流行が小規模なものとなった。これを受け、戦略品である抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」などインフルエンザ関連製品群の売上が大幅に減収した結果、2019年度、2020年度は総売上高が減少した。一方、2021年度は抗HIV薬のロイヤリティ収入が増加したことで売上高が回復し、2022年度は開発した新型コロナ治療薬「ゾコーバ」200万人分、計1,000億円を日本政府が購入したことで過去最高益を更新した。また、塩野義製薬の決算情報によると、2023年度も成長の見込みであり、売上高は4,500億円で5.5%の増収、営業利益は1,500億円で0.7%の増収が予想されている。これは、韓国・中国などアジアでの「ゾコーバ」の実用化に向けた取り組みの進展による海外事業の拡大や、HIV関連製品のロイヤリティ収入の増収を見込んでいるためだと報告されている。
塩野義製薬の大きな特徴として、高い営業利益率を誇るという点がある。塩野義製薬の営業利益率は35%であり、これは国内製薬企業の中で2位である(1位は中外製薬の42%)。これは、塩野義製薬は自社で創製した新薬を海外のメガファーマに導出し、ロイヤリティ収入を得るという戦略で売上を上げているためである。

塩野義製薬の地域別売上高の5年間推移

塩野義製薬の売上高の国内・海外比率における、5年間の推移を下のグラフにまとめた。
塩野義製薬の5年間の地域別売上高
塩野義製薬の5年間の地域別売上高
国内売上比率が4割程度、海外売上比率が6割程度で推移している。2022年度に国内売上比率が急増したのは、日本政府が「ゾコーバ」1,000億円分を購入したためである。また、海外売上比率のほとんどがロイヤルティ収入であり、医療用医薬品の売上の海外売上比率は2割程度である。塩野義製薬は中期計画でロイヤリティ収入を除く海外売上高の成長を目標として掲げている。

(2)塩野義製薬が強みを持つ領域・モダリティ

塩野義製薬の領域別の製品数と売上高

塩野義製薬が持つ医療用医薬品について、2022年度の領域別の主要製品数と売上高を下のグラフにまとめた。
塩野義製薬の領域別の主要製品数と売上高
塩野義製薬の領域別の主要製品数と売上高
※感染症領域では、ゾフルーザ、ラピアクタ、ブライトポックFlu・Neo、フィニバックス、フルマリン、フロモックス、シオマリン、バンコマイシン、バクタ、フラジール、イソジンの計11種をまとめて「感染症薬」としてグラフ化している。

中枢神経領域で最も売上を上げ、次いで疼痛・神経領域で売上を上げていることが読み取れる。なかでも武田薬品工業と共同開発・商業化した「インチュニブ」が192憶円でほとんどを占めている。しかしながら、「インチュニブ」及び「ビバンセ」の共同開発・商業化に関するライセンス契約は2023年3月末をもって終了し、2023年4月からは、武田薬品工業が両製品の医薬情報提供活動を単独で行う予定であることから、塩野義製薬は両剤の売上を計上できなくなる。製品数が最も多い領域は塩野義製薬が最も強みを持つ感染症領域で11製品だった。2022年度は感染症薬の売上高は74億円と少ないが、2023年度は「ゾコーバ」の売上により657億円と急増する予測である。

塩野義製薬のモダリティ別の製品数と売上高

塩野義製薬が持つ医療用医薬品について、2022年度のモダリティ別の主要製品数と売上高を下のグラフにまとめた。

塩野義製薬のモダリティ別の主要製品数と売上高
塩野義製薬のモダリティ別の主要製品数と売上高
※売上が判明している製品のみグラフに反映した。他に核酸医薬品を1製品、ペプチド製品を2製品有している。

塩野義製薬の主要製品のモダリティのうち、最も多かったのは低分子で14製品だった。感染症領域では抗生物質、疼痛・神経領域では低分子が作用しやすいということもあり、塩野義製薬は低分子モダリティがほとんどを占めると考えられる。低分子の他には、核酸医薬品を1製品、ペプチド製品を2製品有している。以上のことから、塩野義製薬は低分子創薬に強みを持つことがわかる。

塩野義製薬の主力3製品の売上高の5年間推移

塩野義製薬が持つ医療用医薬品の中で最も売上を上げているのは「インチュニブ」、次いで「感染症薬」、抗うつ薬の「サインバルタ」である。ただし、塩野義製薬は医療用医薬品の売上よりロイヤルティ収入で売上を上げている企業であることから、塩野義製薬の成長は上記主力3製品の売上高とロイヤルティ収入の増加に依存していると考えられる。そこで、上記主力3製品とロイヤルティ収入の過去5年間の売上高推移をグラフにした。
塩野義製薬の主力3製品の過去5年間の売上高推移
塩野義製薬の主力3製品の過去5年間の売上高推移
グラフから、塩野義製薬の主力3製品の売上は年々減少傾向にあることが読みとれる。ただ、2023年度は「ゾコーバ」が多くの売上を上げると予想されており、「インチュニブ」の売上が計上できなくなることを差し引いても主力製品の売上が増加する見込みである。ロイヤルティ収入に関しては大きな変化は見られず、総売上高の5割程度を占めている。2022年度はその他の割合が増えたが、これは上述した日本政府による「ゾコーバ」の購入による収入である。以上のことから、塩野義製薬はロイヤルティ収入に大きく依存しており、今後の成長は新型コロナ治療薬である「ゾコーバ」の伸長がカギであると考えられる。そのような状況の中、ロイヤルティ収入の約8割を占める抗HIV薬「ドルテグラビル」の特許が2028年度に切れる予定である。この特許切れにより売上が大きく減収すると思われるが、それまでに「ゾコーバ」を含めた新型コロナウイルス関連事業をどこまで伸ばせるかがパテントクリフを克服するために重要であると考えられる。

(3)塩野義製薬の将来性

塩野義製薬の国内開発パイプライン数

塩野義製薬の将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点(2023年7月30日)でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。
塩野義製薬の国内開発パイプライン数
塩野義製薬の国内開発パイプライン数
現在申請の段階まで達している医薬品は3製品、P3は12製品ある。申請段階まで進んでいる製品は全て新型コロナウイルス関連製品だった。以上のことから、新薬となりえる開発パイプラインを多く有しており、今後の安定性と更なる成長を十分にうかがえる。

塩野義製薬の領域別の国内開発パイプライン数

続いて塩野義製薬が現在注力している領域を調べるため、2023年7月30日でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。
塩野義製薬の領域別の国内開発パイプライン数
塩野義製薬の領域別の国内開発パイプライン数
現時点で申請段階まで進んでいる製品は全て感染症領域で、3製品だった。P3段階まで進んでいるのは感染症領域が最も多く7個、疼痛・神経領域で3つ、がん領域、皮膚で1つだった。感染症領域のほとんどが新型コロナウイルス関連製品で、「ゾコーバ」の適応拡大やワクチンだった。がん領域では近年注目を集めているがんペプチドワクチンの開発がP3段階まで進んでいる。

塩野義製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に塩野義製薬が現在注力しているモダリティを調べるため、2023年7月30日でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。
塩野義製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数
塩野義製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数
現時点で申請段階まで進んでいるのは低分子で2つ、ワクチンで1つだった。P3まで進んでいるのは最も多い低分子で6つ、次いでワクチンが3つだった。塩野義製薬が現在注力しているペプチドやヘルスケア関連アプリの開発も目立った。モダリティ別のパイプライン数からもわかる通り、塩野義製薬は低分子だけでなく、ペプチドやワクチンなど生物学的製剤、アプリなどの新モダリティ創出に注力していることがわかる。

まとめ

成長性
  • 2020年度から2022年度は順調に成長。
  • 海外売上比率は6割程度(ロイヤルティ収入を除けば2割程度)
強みを持つ領域・モダリティ
  • 感染症領域、疼痛・神経領域に強みを持つ。
  • 低分子創薬に強みを持つ。
  • 「ゾコーバ」など新型コロナウイルス関連製品が主力になる見込み。
  • HIV薬などロイヤルティ収入で総売り上げの約半分を上げているが、2028年にドルテグラビル」の特許が切れる。
将来性
  • 新型コロナウイルスを含む感染症領域に注力しており、多くのパイプラインを持つ。
  • 低分子だけでなく、生物学的製剤やアプリなどの新モダリティ創出に注力しており、多くのパイプラインを持つ。

この記事について

この記事は、クリニファー株式会社のインターンシップ社員が企業ホームページのIR資料などを独自に調査し、執筆した記事になります。


出典

*1 塩野義製薬[4528]:2019年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結) *2 塩野義製薬[4528]:2020年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結) *3 塩野義製薬[4528]:2021年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結) *4 塩野義製薬[4528]:2022年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結) *5 塩野義製薬[4528]:2023年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結) *6 塩野義製薬 開発パイプラインの進捗状況(2023年7月30日現在)

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