武田薬品工業に転職したい人のための企業分析

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更新日：2024/03/20　
公開日：2024/01/15

※この記事は2023年3月期決算の情報に基づきます。

国内製薬企業の中で売上高トップの武田薬品工業。本記事では武田薬品工業の「成長性」「強みを持つ領域・モダリティ」「将来性」の３つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていきます。

(1)武田薬品工業の成長性

武田薬品工業の売上高、営業利益の5年間推移

武田薬品工業の5年間（2018~2022年度）の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度は武田薬品工業の決算情報（2023年3月期）で報告された業績予想である。

※23年度は予想

売上高と営業利益の推移から、2018年度から2022年度の５年間で順調に成長していることが読み取れる。特に、売上高に関しては2018年度の２兆972億円から2022年度の4兆275億円と約2倍成長しており、国内で他社の追随を許さないほどだ。一方、武田薬品工業の決算情報によると2023年度は売上高が３兆8,400億円で4.7%の減収、営業利益は3,490億円で28.8%の減益が予想されている。

武田薬品工業の地域別売上高の5年間推移

武田薬品工業の5年間の地域別売上高を下のグラフにまとめた。

日本国内での売上が2018年度は全体の27.2%だったが、2022年度は12.7%に減少している。これは、日本は高齢化が進み、財政状況が厳しい等の理由で医療費の抑制強化を行っており、薬価改定による国内医薬品市場が後退していることが原因だと考えられる。この背景により、国内製薬企業は海外展開を加速させている。武田薬品工業では特に米国での売上が伸びており、2018年は全体の39.5%だったが、2022年度は52.2%に増加し、半分以上が米国での売上となった。この結果から、武田薬品工業は世界の医薬品市場の4割を占める米国への進出を加速させていることがわかる。

(2)武田薬品工業が強みを持つ領域・モダリティ

武田薬品工業の領域別の製品数と売上高

武田薬品工業の2022年度における領域別の主要製品数（売上200億円以上の製品数）と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が200億円以下の製品はその他にまとめた

武田薬品工業が最も売上を上げている領域は消化器系疾患であり、その7割ほどを占めるのが最主力製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンタイビオ」で売上が7,027億円であった。次いで希少疾患、免疫疾患となるが、希少疾患やがん領域は1製品の売上が大きくはないものの製品数が多く、免疫疾患や神経領域は1製品の売上が大きく製品数が少ないことがわかる。免疫疾患領域の8割の売上を占めるのが「免疫グロブリン製剤」で5,222億円、神経領域の7割の売上を占めるのが「ビバンセ」で4,593億円であった。グラフからもわかる通り、武田薬品工業は幅広い領域で売上をあげている。

武田薬品工業のモダリティ別の製品数と売上高

武田薬品工業の2022年度におけるモダリティ別の主要製品数（売上200億円以上の製品数）と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が200億円以上の製品のモダリティをまとめた

武田薬品工業の主要製品のモダリティは、低分子、タンパク・ワクチン、抗体の順に多かった。特にがん領域や神経領域では低分子、希少疾患領域ではタンパクが多かった。グラフから、武田薬品工業は低分子から抗体やタンパクといったバイオ医薬品まで幅広くかつ充実したモダリティを有していることがわかる。売上高としては低分子やタンパクより数が少ないが、抗体が最も高かった。これは高い売上高を誇る「エンタイビオ」、「免疫グロブリン」によるものである。

武田薬品工業の主力3製品の売上高の5年間推移

武田薬品工業が開発した製品の中で最も売上を上げているのは「エンタイビオ」、次いで「免疫グロブリン製剤」「ビバンセ」だ。これら3つの製品を主力3製品とした場合、武田薬品工業の成長は主力3製品の売上高の増加に大きく依存していると考えられ、主力3製品の過去5年間の売上高推移をグラフにした。

主力3製品いずれも売上が順調に伸びていることが読み取ることができ、この主力3製品の好調が武田薬品工業の成長を支えていることがわかる。また、全体の売上高に占める主力3製品の割合は約4割と決して高くなく、多くの製品が分散して収益を上げていることからも研究開発力の高さと将来の安定性がうかがえる。しかし、武田薬品工業の成長を支えてきた主力3製品についてだが、最も売上を上げている「エンタイビオ」の特許が2024年に欧州で、2026年には米国で切れる見込みである。加えて上述したが、「ビバンセ」の特許も2023年に切れる。これらにより、今後の売上高の推移には注視する必要がある。

(3)武田薬品工業の将来性

武田薬品工業の国内開発パイプライン数

武田薬品工業の将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点（2023年3月期）でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。

現在申請の段階まで達している医薬品は4製品、P3は20製品ある。以上のことから、主力製品の特許切れが控えているものの、それらをカバーすることが期待できる製品を数多く所持していることがわかる。武田薬品工業は今後も安定して日本の製薬企業を牽引していくことが予想される。

武田薬品工業の領域別の国内開発パイプライン数

続いて武田薬品工業が現在注力している領域を調べるため、2023年3月期でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請段階まで進んでいるのは消化器系領域で1つ、免疫領域で2つ、がん領域で1つだった。P3まで進んでいるのは消化器系とがん領域で5つ、希少疾患と免疫領域で4つ、神経領域で2つとなった。グラフからわかる通り、武田薬品工業は幅広い領域で多くの開発パイプラインを有しており、特に消化器系、希少疾患、免疫、がん領域に注力していると考えられる。

武田薬品工業のモダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に武田薬品工業が現在注力しているモダリティを調べるため、2023年3月期でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請段階まで進んでいるのは抗体で2つ、ワクチンで1つだった。P3まで進んでいるのは低分子が最も多く10個、次いで抗体が5つ、タンパク・ワクチンが2つ、その他バイオ医薬品で3つだった。武田薬品工業は特に低分子、バイオ医薬品では抗体に注力しており、幅広いモダリティで充実した開発パイプラインを有していることがわかる。

まとめ

成長性

売上高は5年間順調に成長しており、2018年度から2022年度では約2倍。
米国への売上を特に伸ばしている。

強みを持つ領域・モダリティ

消化器系領域で最も売上を上げている。希少、がん領域の製品数が多いが、幅広い領域で製品を有している。
低分子からバイオ医薬品まで幅広くかつ充実したモダリティを有している。
主力3製品の好調が武田薬品工業の成長を支えているが、全体売上高の約4割と決して高くないことから、その他にも多くの製品が存在して収益を上げている。

将来性

領域は消化器系、希少疾患、免疫、がんと幅広くかつ多くのパイプラインを有している。
モダリティでは低分子、抗体に注力しており、多くのパイプラインを有している。

この記事について

この記事は、クリニファー株式会社のインターンシップ社員が企業ホームページのIR資料などを独自に調査し、執筆した記事になります。

出典

*1 武田薬品工業[4502]：2019年３月期決算短信〔ＩＦＲＳ〕(連結)　qr2018_q4_f_jp.pdf(takeda.com) *2 武田薬品工業[4502]：2020年３月期決算短信〔ＩＦＲＳ〕(連結)　qr2019_q4_f_jp.pdf (takeda.com) *3 武田薬品工業[4502]：2021年３月期決算短信〔ＩＦＲＳ〕(連結) *4 武田薬品工業[4502]：2022年３月期決算短信〔ＩＦＲＳ〕(連結)　qr2021_q4_f_jp.pdf (takeda.com) *5 武田薬品工業[4502]：2023年３月期決算短信〔ＩＦＲＳ〕(連結)　qr2022_q4_f_jp.pdf (takeda.com) *6 武田薬品工業[4502]：四半期フィナンシャルレポート2023年3⽉期

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